ハームレ社 5軸マシニングセンタ

INDEX

ハームレ社Cシリーズの特長と性能

愛知産業株式会社 遠山克彦

1.はじめに

JIMTOF2016の開催に当たり各社とも新機種を出してくる中、ハームレ社もCシリーズのラインナップがすべて新世代機になり、制御装置も今年度よりTNC640シリーズに変更された。
本稿ではドイツ ハームレ社のCシリーズの紹介とTNC640の新機能を中心に紹介する。

2.ハームレCシリーズ

ハームレ社のCシリーズはC12からC62までの高機能のラインナップとC250、C400の普及機のラインアップがある(表1)。両シリーズとも一見した外観からも分かるように、立形のマシニングセンタで一体型のボディを持ち(図1)、トラニオン形式(揺りかご型)のテーブル上に旋回テーブルが乗った機械構成は、すべてのCシリーズで統一されている。すべての機種で同じ制御装置を採用、すべてのCシリーズ機が違和感なしに操作できる。ラインナップおよびストロークを表1に示す。

Cシリーズ仕様諸元
表1 Cシリーズ仕様諸元

先述した一体型のフレームはC12からC42までは人工石を使用している。この人工石のフレームは比較的に剛性の弱くなりがちな小型機でも、ありあまる剛性を確保できるだけでなく、加工による振動を軽減する制振効果を持つ。このため、加工振動の出やすい難削材の加工において加工面の品質の向上でき、工具の寿命の向上も期待できる。

ハームレC42機械本体
図1 C42機械本体

また、一体化されたフレームは、完全に左右対象形で温度変化に対する機械の変化が一様である。Cシリーズは常時機械の温度補正を行っているが、このフレームを採用することにより、同様の機能を持つ他機と比べ補正の精度が高い。大型機のC52、C62は、人工石ではなく鋳物の一体型フレームとなっている。これは大型機であり、鋳物でも十分な剛性を確保できるためである。当然、同様に左右対象系のフレームとなっている。Cシリーズは、ドイツの工芸に則った基本に忠実で堅牢で高精度な機械といえる。

3.TNC640

Cシリーズのコントローラも本年度よりTNC640を本格的に採用し始めた。TNC640では、画面の見た目も大きく変わり、グラフィックなどの表示も多くなったが、基本的な画面配置操作体系に変更はなく、従来の530ユーザーでもすぐに使用できるように配慮されている。もちろん、パス関係は従来のパスが同様に使用できる。ハード的にはCPUやRAM容量が変わり、補助記憶がSSD化されインターフェイスの速度が向上された。 
ハームレCシリーズはTNC640のオプション機能であるDynamic Precision(CTC, AVD)を標準搭載している。この機能は、加工の精度向上を目的とする機能である。

@ CTC機能:動きによる機械の変形を各軸の加速度とデーターベースを基に補正する機能。
A AVD機能:加減速によって起きる振動を抑制する機能。また、同様にオプション機能であるDynamic Efficiency(ACC, AFC, Trochoidal milling)も標準搭載とした。この機能は加工の効率や使い方を向上するための機能で新機能および従来機能のバージョンアップが含まれている。
B ACC機能:チップ交換式のフライス工具などで起きる荒加工時のチャッターマークの低減をする。
C AFC機能:加工の負荷に応じて速度をコントロールする機能。従来はオプション機能であるが標準とし精度を向上した。
D Trochoidal milling機能:従来より高速な加工が可能ということで定評のあったハイデンハインのトロコイド加工をより最適化し、AFCとのコンビネーションを可能とした。

後期の530でも対応していたが、機械のトレランス設定を従来のトレランス量を指定する方法から、加工方法を指定する方法でできるようになり、さらに容易に加工にあった動きを以下のように選択できるようになった。

標準加工(特殊制御切り)
荒加工:機械振動を抑えることにより、大きな加工パフォーマンスを可能とする
部品加工:弱い加工条件の3D荒加工を非常に速いスピードで主に自由曲面用のセットアップ
3D加工:トレランスが大きい場合
3D加工:トレランスが小さい場合
スムーズ加工:非常に高い加工面を得るためのセットアップ

これらの加工方法を適切に使うことにより、加工時間の短縮や面精度の向上を行うことが容易にできると言える。 
オプション扱いだが、後期の530で対応開始したDCM機能もオペレータにとっては有効な機能といえる。DCM機能はいわゆる衝突防止機構で5軸機特有のテーブルと主軸の衝突を回避することができる。この機構は手動操作中もプログラム運転中でも対応する。
軸の動きに合わせて主軸の方向を変えることにより、旋削の工具で円弧状の加工を可能にしたインターポレーションターニング機能もオプションで対応可能である。

4.オプション機能

ハームレCシリーズのシステムテーブル構成
図2 システムテーブル構成

小型のCシリーズにはシステムテーブルオプションが選択加工である。システムテーブル(図2)は、テーブル中央に穴の空いたベーステーブルがあり、用途に応じてアッタチメントを変更することにより各種テーブルに変更することできる。     
このアタッチメントには油圧及び空圧の供給が可能で、治具の駆動も可能である。もちろん、これらのアタッチメントを利用した場合でもC軸およびA軸の動きはまったく制約されない。
また、中央の穴を利用して軸付きの歯車など長さのあるワークも対応することができる。従来にない自由な発想の治具を開発することも可能となり、特にZ軸方向のストロークに限りのある小型機に有効なオプションといえる。  
昨今、ワークの交換の自動化は小型機の運用上避けられないテーマである。小型機は加工物が小さく比較的加工時間が少なく機械運用における段取りが増え、この時間比率が高いからである。 
従来、ワークの交換はパレットチェンジャーが使用したシステムが主流であったが、Cシリーズはパレットチェンジャーの他にロボットを使用したワーク交換システムを提案している。ロボットシステムは、ワークの大きさやシステムの構築に時間がかかるなどの制約があるが、ワークを直接取り変えることができ、生産効率の良さはパレットシステムの比ではない。これらの新しい機能はこれからの機械システムの未来を先取りしているといえる。

5.おわりに

当社は、ハームレ社製品に限らず数多くの海外の同様に独創性を持つ商品を国内ユーザーに紹介していく。

「機械技術」2017年3月号 掲載


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ハームレC42を使用した、最新の高能率5軸加工

愛知産業株式会社 遠山克彦

2016年のJIMTOF、当社ブースにおいて実演加工した「最新の高能率5軸加工」を、ハームレ社のCシリーズの概要を交えて紹介する。

ハームレ社のCシリーズ

ハームレ社はドイツ南部に本拠地を置く創業70年の工作機械専門メーカーで、年間の出荷台数約800台のうちの90%が5軸機という専門メーカーである。周知のとおり、欧州において5軸加工の歴史は長く、同社も現在のCシリーズの前身のC800シリーズを15年以上前から製造・販売してきた。Cシリーズは1代目のC800から、ガントリー構造のフレームにトラニオン形式のテーブルを採用した強固な機械構成となっており、JIMTOFに出品したC42(図1)も同構造により、高速な5軸マシニングセンタでありながら同会場で実演した加工(図2)に見られるハードな高速荒加工を可能としている。

ハームレ社製C42と加工ワーク
図1 ハームレ社製C42                       図2 C42による加工ワーク

C42は、C800から数えて3代目のCシリーズとなる。また2016年より新しい制御装置であるTNC640に変更され大幅に改良された。CシリーズはC250、C400の汎用機と、C12からC62につながる高機能機に分けられるが、両者の間に精度的な違いはなく、速度やオプションの有無によって分けられる。制御装置の基本仕様も同じである。C42以上の大型機には、旋削機能がついたMT機も選択可能である。各機種ともにパレットチェンジャー、ATCマガジン、ロボットを使ったラインシステムまで追加可能である。
今回出品したハームレC42の特徴は以下のとおりである。

(1) 人造石一体型フレーム
Cシリーズのフレームは石定盤と同等の人造石を使用した一体型フレームを採用。このため高剛性はもちろん、加工時のエンドミルの振動がフレームと共振せず良質な加工面が期待できる。
(2) ガントリー式3本レール
Y 軸は、通常の工作機のリニアガイドが2本レール4トラベラーのところを4本レール4トラベラーの構成とし、ユニットの重心をボールねじで駆動することにより、ガタのないスムーズな動きを実現している。
(3) 高精度・高剛性トラニオン式テーブル
(4) ツインモータA軸
(5) 豊富なテーブルラインナップ
(6) スピンドル衝突時の衝撃吸収機構
(7) 大型ドアの採用により、広い開口による作業性の確保と高い視認性
(8) そのほかの優位性
 ・C軸ダイレクトドライブモータによる高速駆動
 ・温度センサによるリアルタイム温度補正機構
 ・全軸フルクローズドループの高精度位置決め
 ・ブルム社のレーザーによる工具長測定
 ・レニショー社のタッチプローブによる位置測定

最新の高能率5軸加工

今回の加工実例は、3つのパートで構成されている。すべて、エムーゲフランケン社の工具、ホルダおよびオープン・マインド・テクノロジーズ社のCAM「hyperMILL」を使用して加工を行った。

1.バレル工具による仕上げ加工の高効率化  
ボールエンドミルを使用した仕上げ加工を行う際の面粗さは、エンドミルの径と加工ピッチによる。径が大きければ加工面の山(カスプハイト)が小さくなり、ピッチを小さくすれば同様にカスプハイトは低くなり面粗さが小さくなる。通常、加工物の大きさなどでエンドミルの大きさは制限されるため、加工ピッチを狭くすることで面粗さを向上させる。当然、ピッチを狭くすると加工時間は伸びてしまう。
今回の加工実例で用いたバレル工具は、小径のエンドミルでありながら側面もしくは先端面に大きなRをもった工具で、加工ピッチが広いままでも良好な面粗さを実現できる。本加工実例では、φ8のボールエンドミルに対してR75のバレル工具を使って加工効率の比較を行った(図3)。同等の面粗さ(カスプハイト)になるように加工ピッチを設定して加工した結果、図2の円形部分が示すように、バレル工具では1分で加工が終了、ボールエンドミルでは同時間では1/4ほどしか仕上がらなかった。

Φ8ボールエンドミルとR75バレル工具による加工効率の比較
図3 Φ8ボールエンドミルとR75バレル工具による加工効率の比較

2 .トロコイド加工による加工の高効率化 
トロコイド加工に対応したCAMによって一定した定切込みの適正な加工パスを作成することにより、エンドミルの負担は著しく減少する。さらに工具の有効長をフルに使用でき加工効率の向上も実現できる。本加工事例では同径のエンドミルを使い、@切込み12mmでの3回加工と、A36mmのトロコイド加工での1回加工との比較を行った(図2)。加工時間に大きな違いはないが、工具の損傷状態では大きな差が確認できた。

3.特殊工具によるねじ加工の高効率化
通常ねじ穴は、ドリルで加工しタップを通して作製される。本加工事例では、@先端にエンドミル状の刃をつけたタップでねじピッチに合わせたヘリカル加工を行いながら下穴なしでの加工、A大径の穴にねじを切る提案としてねじピッチに合わせた総型エンドミルでの加工、B自由度の高い1枚刃のエンドミル加工を実演した。ハームレCシリーズではすべての加工を対話式のプログラミングで実現できる。

今回の加工事例は、従来機での実現の壁が高く、理論的には素晴らしいが敬遠されてきた加工と言える。確かに制約事項は多いが、ハームレCシリーズを使用することにより壁は低くなると言える。
当社はハームレ社を筆頭に、革新的なラング社のクランピングシステムなどを通じて世界の技術を広め、日本の技術革新に努めていく。

「型技術」2017年2月号 掲載


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【ユーザー活用事例】 友栄精密(大阪・富田林市)× HERMLE × LANG

南大阪の「5軸銀座」で存在感示すHERMLE『C400』

ところを大阪南部の中核都市、富田林市へ移す―。
本紙では昨年中も度々、その圧巻の設備投資状況を報じた友栄精密(井村巧社長)。
同社は、同時5軸制御マシニングセンタをはじめ、多種多様の工作機械、加工技術により、あらゆる複雑形状(インペラ・シリンダヘッドなど)の超高精度な加工を実現する。
24時間体制による短納期対応、それに伴う、各種検査設備を取りそろえ、品質保証には絶対的な自信をもつ「精密加工のプロ集団」だ。
そんな同社の所在周辺が、それこそ、「5軸銀座」化しつつある。
「来年あたりで、5軸加工機が総勢15台弱になる。加えて、横型MCも同数ほど所有しているが、単に横型というだけでは競争力が落ちてしまうので、これらを5軸化していこうと考えている。とにかく、機械を入れ替え続ける」と、繁木秀信専務。
「昨年は7月に1台、9月に1台、12月に3台、今年に入って3月に1台、これからも3台入る」と、昨年後半からの設備導入のようすを指折り数えながら、「当然、それらを入れるハコ(工場)が必要」と続ける繁木専務は、折しも、「第7」工場の契約交渉から戻ってきたばかりだった。
え? いつの間に一気に第「7」! すでに第5、第6工場の手筈も進んでおり、現在、第4工場までが周囲で稼働中だという。
「そういえば、第2工場が、ちょうど『C400』を入れた年なので、まる2年が経つ」との言葉どおり、同社もまたHERMLE5軸加工機の使い手だ。

第一印象が「強烈」だったハームレ機の速さ

いまから7〜8年前の大阪でのある展示会で、ハームレ製5軸機をはじめて見た繁木専務は、「動きを見たときに、この機械は『強烈』だと思った。動きとは『速さ』のこと。重量物を載せることができ、振り回せる、国内メーカーにはない動きだった」と述懐する。
その後、2015年にC400を導入。「故障が少なく、馬力が抜群。同時5軸による実加工の精度はNo.1だと思う」を日々実感しながら、「アルミやステンレスといった自動車部品の削り出しで活躍中」だと話す。
関西ではこのところ、自動車関係の仕事が増えてきているともっぱら。同社も例外ではないが、「2020年頃までは拡大路線のようす。東海地域の加工業者だけではまかないきれず、流れてきているとも聞くが、当社は『流れ』ではなく『取り』にいっている」と、モーターハウジングの削り出しなどで多忙を極めている。
そんななか、C400は今後も、「自動車部品の削り出しで間違いなく力を発揮し続ける。そういう部品の仕事では絶対的に有利だろう。スピードが本当に速い」と存在感を示す。
また付随して、ラング社クランピングシステムについては、「2回前のJIMTOF(2014)での展示(愛知産業ブース)を見て」をきっかけに、導入した。
「しっかりとクランプできるので、クランプ不良による材料費を抑えられる。いつも同じ位置にクランプでき、再現性が高いのが要素」だと言及する。
足元の業況を繁木専務は、「押し上げいてるのは半導体関係。20年に一度といわれる半導体の革新、3D‐V NAND関係による製造装置向けの仕事が好調。半導体需要による波のサイクルはこれまでよりも長いだろう」と概観。
設備投資の波もまだまだおさまらない。

友栄精密事例


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【ユーザー活用事例】 若園精機(岐阜県養老町)『INTERMOLD2017』出展

目的は、1に「金型メンテナンス」、2に「高度スキャニングサービス」、3つめは「4つの穴」あけます

リーマンショック覚めやらぬ2009(平成21)年に、岐阜県下で最初のHERMLE(ハームレ/独)社の5軸マシニングセンタを導入した、養老町の若園精機(若園明人社長)。
若園拓馬専務はいまもって、「これが当社のターニングポイントだった」と繰り返すなか、今回が5度目となるINTERMOLD出展を機に、また新たな試金石を投じようとしている。
ダイカスト金型製作、サイズの大きい総削り出しによる試作品製作など、50年以上にわたり金属加工(切削・接合)に特化した実績をもつ若園精機は、今回の「INTERMOLD2017」に出展する目的を3つ挙げている。
1つめは、昨年の同時期に本紙で取り上げた「金型メンテナンス」。
2つめは、FARO Edge(ファローエッジ)ポータブルアーム3次元測定器(非接触測定器)を用いた高度スキャニングサービス(金型修理前後のデジタイジング形状データ)。
そして新たに3つめとして、「金型の底面にラング社製クランプシステム用のボルト穴をあけさせてほしい」とPRする。
一見、「どういうこと?」と考えてしまうのだが、「金型やワーク材の設置面に4つの穴を追加することによる段取り時間の大幅短縮」とでも表現できるだろうか。会場では、その実加工例の展示を予定している。
ハームレ社製5軸MCの販売・技術サポート・アフターサービスを手掛ける愛知産業(本社=東京都品川区東大井、井上博貴社長)は、LANG(ラング/独)社の製品を、5軸加工における最適なクランピングシステムとして推奨(販売・提案)しており、若園精機でも5軸MC『C40U』とともに、半ばセット的にラング社製品を導入した。

5軸機に必須のラングクランピングシステム

わずか3mmの掴み代で驚異の把握力を実現、スピンドルヘッドとの干渉が少なく接近性に優れる等々をふれこみとするラング社のクランピングシステムに対して、若園専務は初歩的なメリットとして、「ラング製品が機械に搭載してあるだけで、金型を載せた際に平行を見なくてよい。置けばそのまま加工できる」と実感はしていたものの、「正直、現場にあっても気付かなかった『良いもの』を、ようやく見つけることができた」旨を、次のように語る。
「当社では、年間1400〜1700パーツの、類似はしていても全て異なるものをつくっており、同じものはない。そう考えれば、C40Uの加工ストローク(X:850mm × Y:700mm × Z:500mm)内でワーク形状がさまざまに変化しても、ラング製品で対応できるシステムを選定したことに、最近、気がついた(笑)」。
その「最近の気付き」に至るきっかけは、「とある欧州での展示会で発表されていた、非常に大型のクランププレートを昨年春先に、日本で初めて導入したこと」だったと振り返る。

金型はすべて「四角形」からはじまる

ハームレ機のみならず、5軸機ユーザーでラング製品を使っているユーザーは多いという。
「CADモデルどおりのものが、機械上で加工できる」と若園精機でも単品購入も多く、予算次第では3軸MC用にも揃えたい意向もあるなど、ハームレ機の使い手には、ラング製品をプラスαで購入するケースが多い。
「『丸い』同業他社製品とは、そもそも形状が違う。金型とはすべて『四角形』からはじまるもの。ラングは全て四角いプレートの積み重ねで、テーブルの定盤にそのまま敷くような金型に沿ったプレート形が基本。目に見えてランナップが豊富であり、治具だけでここまで扱っているメーカーはないと思う。専業メーカーならではの選択肢が多く、うれしい限り」と評するとおり、若園精機では現在、約20製品をそろえる。
このように、数年前に始まるラング社クランピングシステムの導入が、結果的には始祖? 遠縁? となり、ダイカスト金型などへ少し加工を行うだけで、ラング社クランプシステムへの対応ができ、もちろん、ワーク側へのダメージはないうえ、コストダウンなどメリットが提供できるといった新たな取り組みに臨む。
自社で金型設計し、型を鋳造業者におさめていたりする場合は、「底面に穴を4つ設けるだけで金型加工が楽になる」ということだが、実際はどこも手掛けてはいない。
「そこをやってくれ、というニーズがある。鋳造系、ダイカスト系、全ての金型には必ず底面に、結構、穴があいている。どのみち、固定するための穴もあけているのなら、プラス4ヶ所の穴をあけさせてもらえれば(ラングユーザーにおいては)完全に『ルール化』ができる」。
同社がメインとするダイカスト金型のメンテナンスにおいて、「どこでつくったのか分からない金型でも、底面を見てラング用の穴があいていれば、どの機械でも選ばずに載せることができ、楽だなと思う」と続ける。
若園専務はリーマンショック以降、外へ出る機会が多くなり、金型、治具、工具、機械に関しさまざまな局面に接しているが、「金型の上部あたりにまつわる訴求は多いが、こういった『下(底面)の部分』についてPRをしているのは見たことがない」と話す。

「的外れ」ではなく「革命的」な試みに意欲

ハームレ5軸機&ラングクランピングシステムに最初にふれた、リーマンショック直後の時期、顧客の大手メーカーからは、「もっと無駄なく速い加工方法はないか? 速く加工できコスト削減になる製品形状の工夫は? など提案を求められていたが、その頃は5軸機導入への端境期でもあり、システム自体を熟知していなかったので、当時はまだ、手を上げて言えなかった・・・」と述懐する。
「どこもやっていないということは、的外れなのかもしれないが」と前置きしつつも、「先述のとおり、年間に手掛ける1400〜1700のパーツ全ての裏にこの穴があいていれば、加工は革命的に速くなる」と、いわば「業界初」の試みに意欲をのぞかせる。

若園精機の事例

若園拓馬専務はHERMLE『C40U』の前で「金型の底面にラング社製クランプシステム用のボルト穴をあけさせてほしい」とアピール

若園精機の事例

工場内。50年分の職人の知恵と、5軸加工機を匠に扱う技術力が柱


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ハームレ社マシニングセンタCシリーズを使用したスパイラルベベルギヤの加工

愛知産業株式会社 遠山 克彦

通常、ベベルギヤは専用のカッタを使い歯切り盤で加工されている。汎用のマシニングセンタでも加工可能だが、加工時間が専用機に比べ長くなるため実績は少ない。しかしながら、少数ロット試作などの特殊な製品もしくは大型のギヤに対して、マシニングセンタでの効率化によっては十分採算の取れる可能性もある。
本稿ではハームレ社Cシリーズを使用し、Φ250mmのスパイラルベベルギヤを、加工した例を紹介しながらマシニングセンタでのスパイラルベベルギヤ加工について検証、紹介する。

ハームレCシリーズ

ハームレCシリーズは、一体型フレームを採用した高精度5軸マシニングセンタとして、2004年のJIMTOF日本発表から10年以上経過し、高速で高精度の同時5軸加工が行える機械として金型、パーツ加工の業種で定評を得てきている。Cシリーズは同社の主力シリーズであり、小型機のC12から大型機のC60までのラインナップを持つ(図1、表1)。

図1C42U外観、表1Cシリーズ仕様諸元
図1 C42U 外観                      表1 Cシリーズ仕様諸元            

機械構成は、5軸機としては最適の形式の一体型のガントリーフレームで統一されている。このフレームの特徴として、一体型のフレームとなっているため剛性が高く、オーバーハングがないため、全ストロークで高精度を維持できる、固定されたフレームに直付けされた旋回軸(A軸)は、強固で直線軸に対してのジオメトリの変化がないなどの点があげられる。また、中型機のC42より小型の機種は人造石を使ったフレームとし防振性の良い強固な形式となっている。国内では、当社が総代理店として販売およびアフターサービスを行っている。

加工モデル、パスについて

スパイラルベベルギヤのモデルは、英国のDONTYNE 社より提供のΦ250の歯数23枚のスパイラルベベルギヤを使用した。加工パスは米国Concepts NREC社のMAXPACを使用し、すべての加工に対してテーパエンドミルを使用した同時5軸加工で行った。MAXPACは翼面形状のパス作成に特化したCAMだが、ギヤ加工にも応用できる。今回使用したバレルエンドミルによる仕上げ加工にも対応している。

テーパエンドミルについて

テーパエンドミルは同時5軸マシニングセンタを使用して加工することにより、多くの利点を発揮できる。テーパエンドミルの荒加工での強みは剛性である。加工量の多い根本は太く剛性が高く、剛性が下がる先端では加工量が少なく無理のない加工となる。今回使用したエムーゲ・フランケン社の荒加工用テーパエンドミルは、刃長一杯までZ切込みを大きくできる。荒加工後の側面を追い込んでいく工程では、進行方向対して横向きの傾きを変更することによりモデル形状に合わせた面ができる。さらに先端部が小径なのでコーナRを小さくすることもできる(図2)。

先に記した通りテーパエンドミルは、同時5軸マシニングセンタの使用によりのみ活用できるが、傾け方を間違うと工具破損の原因になり得る。例えば、工具を押す方向に傾けることは絶対に避けなければならない。工具を押す方向とは、進行方向に対して後傾姿勢(図3左)で加工することで周速0の先端で加工するだけでなく、加工反力の逃げがなくなり、無理をするとびびり出し、最終的には先端部が破損する。加工は必ず引く方向(図3右)でするのが鉄則である。一般的に、CAMでは、この傾斜を自動で管理できないので、必ず指定する必要がある。

図2傾きの変更で形状に合わせられる、図3進行方向に対する姿勢
図2 傾きの変更で形状に合わせられる                図3 進行方向に対する姿勢          

バレル工具

仕上げ工程では、加工時間短縮のためにバレル工具を使用した。バレル工具とは側刃にRがついた工具で、同じピッチでもカスプ高さを抑えることができる(図4)。今回は先端R1で測刃にR95のついたエムーゲ・フランケン社のエンドミルを使用した。カスプ高さ5ミクロンで比較した場合、単純計算でR1のエンドミルで送りピッチ0.2mmに対してR95のエンドミルで1.9mmと9倍以上になり加工時間も格段短くできる。 
このように大幅に加工時間を短縮できる可能性を持ったバレル工具ではあるが、対応するCAMと同時5軸マシニングセンタは必須条件となる。ハームレCシリーズは高速で滑らかな同時5軸が可能で、このような加工に最適といえる。

図4残り代の違い
図4 残り代の違い

加工結果

1溝当たり荒加工2分30秒、仕上げ2分30秒、刃底1分で6分強、これは全23刃を2時間半で加工できることになり、専用機での加工時間に近づき加工面も良好であった。(図5、図6)

図5加工結果1、図6加工結果2
図5 加工結果1                        図6 加工結果2    

☆     ☆

本加工で記したギヤ加工は、専門性が高く刃当たりの修正など複雑な工程があり、新規事業としては難易度が高い。しかしながら、同時5軸マシニングセンタとテーパエンドミルの組み合わせの応用の幅は広く、多くの事例に対して活用できる。   
本加工は、ハームレユーザーの若園精機(株)(岐阜)の協力をいただき加工した。当社は、ユーザーとともに同時5軸の加工技術を中心に周辺機器などの紹介に今後とも取り組んでいく。

「機械技術」2015年12月号 掲載

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